Destructured
Yutaka Yamauchi

EGOS Workshop in Kyoto

今年12月13-15日に京都大学でEGOS and Organization Studies Workshopを行います。発表申込は6月30日締切です(1,000ワード以内)。正式にはウェブページCFPなどで説明していますが、個人的な思いを書いておきたいと思います。

EGOS (European Group for Organizational Studies)は2,500人以上の会員がいる組織研究の学会組織です。経営学ではAcademy of Managementという巨大な学会組織がありますが、EGOSは組織研究に特化し、ヨーロッパを中心とながらグローバルな会員を抱える、存在感の大きなコミュニティです。毎年7月の年次大会(Colloquium)には、日本の研究者もそれなりの数参加しています。今回はEGOSとそのジャーナルであるOrganization Studiesの名前をつけたワークショップを、京大で日本のコミュニティ向けにやるということです。

私のように主流派ではない研究をしていて、むしろ主流派に批判的な場合、米国中心のトップジャーナルというのを狙うのには限界があります。例えば、エスノメソドロジーをやっていて組織論で論文を出していきたいと考えている研究者は一定数いますが、方法論的な特異性から組織論で出せるジャーナルは限られてしまいます。具体的には、Organization StudiesとJournal of Management Studiesが我々の中でのトップジャーナルです。米国系のジャーナルは、何かの特集でうまく入り込まない限り、レビュアーが見当違いなことを言い始めて終ってしまいます(エスノグラフィだと勘違いしているレビュアーが最もたちが悪いです)。エスノメソドロジーに限らず、そういう非主流派の領域でやっている研究者は同様のジレンマをかかえていると思います。

しかしながら、2016年にサバティカルを取ってヨーロッパに滞在してわかったのは、このような非主流派研究者がかなり集まっており、Organization Studiesはトップジャーナルとして確固とした地位を築いているということです(むしろ米国中心のジャーナルに否定的な態度が感じられます)。エスノメソドロジーはそれでも少ないですが、ヒューマニティ系の研究や哲学的な理論を用いてラディカルな視点を提供している論文が多く発表されています。そのことがわかっただけで、サバティカルに行って本当によかったと思います。それまで自分の研究は一人でやっていくしかないと思っていましたが、それ以降研究の姿勢はとてもポジティブになり、EGOSを中心的な場として自分の研究に自信を持って邁進しようと思えるようになりました。

是非日本の研究者にもそのことを伝えたいと強く思うようになりました。日本の若手の研究者や学生と話しをすると、主流派の研究がつまらないと思っていても(もちろん素晴しいものはあります)、このご時世であまりカッコのいいことを言っても勝目がないのであきらめているという方が多い現状を見ていました。私も、その後のキャリアが厳しいことがわかっているので、学生を引き込むことに躊躇してきました。自分も仕事をするコミュニティを確保し、ある程度見通しを持てるようになったので、今回EGOSおよびOrganization Studiesのワークショップを日本でやることで、若手の支援をしたいと思ったわけです。

このコミュニティの中ではトップジャーナルですので、Organization Studiesに論文を通すことは至難の技です。ヨーロッパでもみんな苦労しています。型が決まっていないので、言語的な壁があると余計に難しいです。Editor-in-ChiefのDaniel HjorthやEGOSのボードメンバなど親身にアドバイスしてくれる方々が揃っているので、これを立ち上げれば若手を充分に支援できるのではないかと思いました。EGOSのコミュニティは気を使うことなく自然に話しができる人たちの集まりです。エコノミーで来てくれますし、キーノートスピーカーは基本的に謝金を出さない(出してはいけない)方針であったりします。コミュニティのために尽力している人が多く、今回は特に若手や学生を支援したいという純粋な思いで動いてもらっている人ばかりです。

是非みなさまには積極的に参加いただければうれしいです。もちろん若手だけではなく、どなたでも大歓迎です。