Destructured
Yutaka Yamauchi

September 2019

「ほんもの」とは

現在、「ほんもの」(真正性 authenticity)の価値がどんどん高まっています。先日、京都外国語大学主催のシンポジウムで観光の「ほんもの」と「にせもの」について、越前屋俵太さんのファシリテーションで議論しました。そこで新しい気付きを得ることができましたので、少し説明したいと思います。チャールズ・テイラーが言うように、「ほんもの」は、18世紀末の近代の開始時点で個人主義や道具的合理性が社会に浸透してきたときに、反撥して生まれたロマン主義に始まると考えられます。自分の内なる自然の声を聞き、自ら独自のスタイルを生み出すというものです。このときから、芸術は模倣としてのミメーシスから、独創的な個性を「表現」するようになりました。しかしここで問題なのは… Read More…

サービスの弁証法

従来からサービスの関係性を弁証法で捉えようと提案してきました。私の研究が出発点が次のような疑問からでした。サービスの理論は全て客を満足させるということを前提としているにも関わらず、実際には多くのサービスが客にとって緊張を強いるようになっているのはなぜか? 京都の料亭、東京の鮨屋、高級なフレンチなどのことであったり、カッコいいカフェやリテラシーが求められるラーメン屋のことです。行きついた答えは、サービスとは弁証法的な闘争だというものでした。つまり、独立した他者によって自分が否定されて初めて、自分を証明し、他者に承認されることが可能になるということです。逆に一方的に満足させようと向って来られると、そのようなサービスには魅力がなくなったしまいます。つまり我々は満足させて欲しいのですが、満足させようとされると満足できなくなるという弁証法があるのです… Read More…